埼玉矯正歯科院長 特別対談【後編】
更新日:2021/10/18
これまでオルソペディアでは、「矯正歯科専門」「症例写真の掲載」など独自の基準で矯正歯科を評価してきました。
今回は歯列矯正を我々編集部の意見だけでなく、矯正歯科の医師としての立場から語ってもらうべく、埼玉を代表する矯正歯科医院の院長お二人にお話を聞きました。
今回は、近年話題になることが多いマウスピース矯正についてお二人に聞いてみました。
大宮SHIN矯正歯科 矢野晋也院長 プロフィール
公益社団法人 日本矯正歯科学会 認定医。
歯学部卒業後、大学病院の矯正科に所属し、12年間研鑽を積んだ治療技術を持つ。
提供するサービスできれいな歯並び、口元、清潔で白い歯になっていただき、患者様が心から笑える笑顔になれるようにお手伝いできる医院を作りを目指している。
やまぐち矯正歯科 山口明邦院長 プロフィール
公益社団法人 日本矯正歯科学会 認定医。
幼少時に自身が経験した矯正治療治療後に歯並びが綺麗になり、口元を気にしないで笑うことが出来る事に感動した経験が矯正歯科医を志すきっかけ。当時の感動した気持ちを忘れず、患者様に「矯正をして本当に良かった」と思ってもらえるように日々精進している。
“格安マウスピース”の流行について
最近は従来では考えられなかったような安い値段を宣伝しているマウスピースでいろいろな種類のものが出てきたりしていますね。
マウスピース矯正は、使い方が間違いなければすごくいいものです。矯正歯科医はマウスピースに抵抗がある人が多いんですね。(良し悪しの前に)自分なりのこだわりがある先生が多いんです。
ただし、最近のマウスピース矯正はやりすぎじゃないかなって思う部分もあります。部分矯正用の安価なマウスピースなどもありますね。
カウセリングに行った際の説明で担当の方から「前歯上下8本だけです」と言われて、その時に初めて部分矯正だということを知りました。
僕自身は部分矯正をおすすめしません。また、歯が見た目的に美しく並べば良い、という思考を持つ一般歯科の先生は多いと感じることがあります。
実際は矯正治療は見た目の歯並びに加えて、噛み合わせを治療することがとても重要です。
矯正歯科医はマウスピースに抵抗がある人が多いとのことですが、それは新しい治療法だからということでしょうか?
そうですね。新しいものを拒む先生はすごく多いです。「あんなのじゃ治らない」ってこだわりの強い年配の先生は特に多いです。
ですので、やったこともないのに批判する先生が多いと感じます。埼玉県内に矯正専門の先生でマウスピースを中心にやっている先生が私以外にあまり多くない理由でもあります。
マウスピース矯正は大体何年前ぐらいに出来た矯正方法なのでしょうか?
アメリカで1990年ぐらいに登場しました。日本に入ってきたのは2006年くらいで最近のことです。ここ3、4年ですね。急に普及し始めた。
ここ3、4年で広まったのは、利益率が良いからです。また、シミュレーションを与えてくれるので、ある程度それに沿えばそれなりの出来になるからです。恐らくワイヤー矯正の知識もない先生がいろいろやり始めて問題になっているケースも結構あると思います。
たまにSNSなどで見ていても、この先どうなっちゃうんだろうというケース、ここまでで終わりなんだと思うケースがあります。
医院主導でとりあえずシュミレーションをしてマウスピースをして。やっておしまいという感じがあり、患者さんにとって何が一番いいのかというを度外視している感じがしますね。
安さを求める人はそれでいいのかなとは思いますが、金額が安いことには理由があると感じます。
マウスピース矯正を選ぶ人は何を重視しているのか
では、矢野先生が多く手掛けているインビザラインについて教えてください。
インビザラインは低価格マウスピースと違いワイヤー矯正と同じぐらいの価格がかかります。
ワイヤーではなくインビザラインを選択するメリットや、実際にインビザラインした患者さんは何を重視して選んだのでしょうか。
患者さんでインビザラインを選択する人は、やっぱり見た目と着脱できるっていうところが大きいかなとは思います。
あとはクリニックでシミュレーションが見られることです。術後のゴールの歯並びが実際のビジュアルで見られるというのは要素として大きいと感じます。
ワイヤーの場合はそれこそ別の業者の高価なソフトを使う必要があり、ほとんどのクリニックでシミュレ―ションを導入していないんです。
メリットは見た目と痛みの少なさです。
患者さんに説明するのは歯が清掃しやすいこと、通院回数が少なくなることです。
また、結婚式やイベントがある人はインビザラインを選択することが多いですね。
インビザラインに向かないケースはありますか?
抜歯するケースです。そういう患者さんに限ってインビザライン希望をしていることもありますね(笑)。
インビザラインだけでは難しいケースでは、表側ホワイトワイヤー等で1年間矯正をしてもらい、その後にインビザラインにするプランを提案すると結構それを選択する方が多いです。
(抜歯を絶対する必要がある場合は別ですが)歯を抜く場合、歯を抜かない場合と選択肢を用意してシミュレーションを両方立てたりするようにしています。
こちら側のこだわりは押し付けないようにはしています。
僕も両方提示して選んでもらうというふうにやっています。
ホワイトワイヤーとインビザラインを上下で併用する組み合わせは僕はやってないんですけど、やってる先生もいますね。
矯正治療に関する公正な情報をインターネット上で探すのが難しくなっている現状について
マウスピース矯正の正しい情報がインターネット上で見つかりづらいという現状があるように感じます。
できる範囲で情報発信をしたいですね。一般歯科の先生も矯正をする資格は持っています。そういう先生も含めてフォローアップできる機会がうまく回るようになればいいんじゃないかなと思いますけどね。
批判するだけでなくて、救うことは自分達でもできると思っています。フォローアップはとても大事ですね。
そうですね。情報発信が大事だと思います。なかなか自分たちではそういうことがやる余裕がないというのが現状ですが….
これから矯正治療をしようと思う方を惑わせないような情報がもっと世の中に広まっていくことが重要だと思いました。
患者さんがそれぞれの治療のメリットやデメリットを知った上で、自分に合うものを選択できるようになれば良いと思います。
そうですね。
オルソペディアはそのためにも、公平な情報発信の場になれるように頑張ります。
今日はありがとうございました。
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