「なぜ最近安さを売りにした矯正歯科が増えているの?」
更新日:2021/04/29
先日、日本臨床矯正歯科医会会長・稲毛滋自氏は、AERA本誌に「マウスピース矯正は手軽に見えるが注意が必要だ」と警笛を鳴らす記事を掲載しました。
マウスピース矯正「手軽で目立たない」の文言に惑わされないで 日本臨床矯正歯科医会会長が警鐘(AERA dot.)
最近のマウスピースを使った歯科矯正治療では、「2万円から」「10万円から」と低額での矯正治療を謳うものが増えています。
100万円程するのが相場の矯正治療の世界で、「2万円から」なんてことが本当にあるのでしょうか?
前回に引き続き、今回も匿名を条件に、矯正歯科専門医にお話を伺いました。
注意したい安さ重視の矯正歯科
「2万円〜3万円」からという謳い文句のマウスピース矯正は増えています。
しかし、矯正歯科医のお話によると、
「それはあくまで“部分矯正”のことで、前歯1本分などの話です。」
「実際に診察を受けるとその金額では済まないので、結局は大きな額の治療をお勧めされることになります」とのこと。
低価格で矯正治療ができるということから矯正治療の関心が集まっている一方で、
「2万円からというキャッチなコピーが集客のためのうたい文句になっている」「それで矯正治療に興味を持ってくれればよいが、実際は安い矯正治療の後で矯正歯科専門の病院へかけこむ患者が少しずつ増えている」といった側面もあるそうです。
低額治療の多くは「部分矯正」「経験の少ない医者」
また、低額治療の多くは、「経験の少ない医者による治療」「部分矯正」が理由になっているそうです。
経験の少ない医者は症例数や技術で競合と勝負できず、治療費を抑えるしか集客の手立てがないため、結果として安価な矯正治療に走りがちです。
次に、部分矯正という理由があります。
部分矯正とは、例えば「前歯だけを矯正」する治療です。
前歯だけの矯正治療によって、笑ったときの前歯の見栄えは確かに良くなるそうなのですが、矯正歯科専門医の方によれば「矯正治療で最も大事なのはかみ合わせ」だそう。
前歯の歯並びを綺麗にするためには前歯を動かすことになりますが、実は「治療をしていない奥歯もそれに合わせて動く」のだそうです。
つまり、部分矯正では今まで問題のなかった奥歯に異常が出たり、前歯と奥歯の間にスペースができてしまうことがあるのだとか。矯正歯科専門医は、これについて「最大の問題だ」と指摘します。
矯正治療は「かみ合わせ治療である」
前歯を部分矯正した結果、奥歯の噛み合わせがおかしくなってしまう、ものが食べにくい、口が閉じない、歯が痛いといった症状が起きて、再治療になることがあるそうです。
その場合、矯正治療はやり直しになります。
矯正を専門に取り扱う歯科医いわく、「何もしなかった状態よりもむしろ修正は難しくなる」とのこと。
最初からきちんと認定医を始めとした専門の矯正歯科医にかかっていれば、結果的には費用も時間も節約できることになるのです。
矯正治療にとって大事なのは、「確かな治療」です。
目の前の安さ・見栄えに釣られないように気を付けましょう。
まとめ
低額を謳う矯正治療は、
- 部分矯正ではかみ合わせや奥歯の治療がされず再治療になる確率が高い
- 経験の少ない歯科医は低額にするしか治療の売りがない
ことに気をつけましょう。
矯正治療は審美的な側面も大きいですが、やはり「かみ合わせの治療」です。
例えばあなたが大きな病を患ったとき、価格を取るのか、少し高くても評判の名医をとるのかといった話だと思います。
矯正治療では、症例数が多く、矯正専門医院や認定医などの専門医を選ぶことがとても大切だということがわかると思います。
病院の選び方などは他の記事でもポイントを書いていますので、そちらも参考にしてみてくださいね。
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