治療について

矯正歯科治療の医療費控除について

更新日:2021/05/21

患者さんにとって決してお手軽とはいえない、矯正歯科の治療コスト

ご自身やご家族のために1年間(1月1日から12月31日の間)で10万円以上の医療費を支払った場合、税務署への確定申告をすれば、納付した税金の一部がお手元に還ってくることをご存知でしょうか?

医療費控除は、過去5年前までの医療費が対象となっているため、もしその年に申告し忘れていても対象年までに所定の手続きを行えば、一定金額の所得控除を受けることが出来る使い勝手の良い制度になっています。

ここでは、対象となるための要件やお得な申請の仕方など、知っておきたい「矯正治療の医療費控除」の基礎知識についてご紹介します。

対象となる矯正治療のケースについて

歯並びの改善を目的とした大人の矯正治療は、一般的に「審美的な処置」としての側面が強いため、基本的には医療保険(公的医療保険)が適用されない自由診療での治療となり、全額自己負担となります。

しかし、以下の3つのケースに対する矯正治療は、公的医療保険が適用され、確定申告による医療費控除を受けることが可能です。

①生まれながらにしてお口の異常が見られる先天異常
②顎の骨の形、位置、大きさに著しい異常が見られる額変形症
③前歯が三歯以上の永久歯萌出不全の場合に起きる咬合以上(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)

上記の場合以外でも、子供の矯正治療に関しては、基本的に無条件で医療費控除の対象となります。

発育過程の段階における歯並びの矯正は、その後の歯や顎の正しい成長を促す「治療行為」として、必要だと考えられているからです。

矯正治療費は低額とは言い難いものがあり、場合によってはかなりの控除額となるので、医療機関から受けとった領収書通院時にかかった諸経費の領収書医師による診断書など確定申告の際に必要な書類は、きちんと保管しておくことが大切です。

なお、公的医療保険の適用は、厚生労働省が定めた施設基準を満たしていると認められた医療機関での治療に限るので、その点においても注意が必要です。

医療費控除対象の「1年間に支払った医療費」に含まれるのって?

結論から先に言うと「矯正治療費」だけでなく、「医薬品」や「通院のためにかかった交通費」も医療費費控除対象の「1年間に支払った医療費」に含まれます。

・矯正治療費(検査・診察料、装置代、処置・調整料)
・処方された医薬品の費用(予防や健康増進を目的としたものは対象外)
・通院のための交通費(子どもや親など同伴者の通院費も対象。ただし、バスや電車などの公共交通機関に限る)

1月〜12月までの1年間にかかった上記の総計コストが10万円以上であれば、確定申告における医療費控除の対象となります。

なお、矯正治療費の支払い方法として、クレジットカード払いやローン(デジタルローン)払いを選択される患者さんも少なくありませんが、そのようなケースも医療費控除が適用されます。

確定申告を行う際の添付書類として必要になりますので、ローンの契約書や信販会社の領収書は、お手元に大切に保管して置くことも忘れないようにして下さい。

医療費控除の手続き期間について

一般的な所得税の申告期限・納付期限は、例年2月16日〜3月17日までと決められていますが、新型インフルエンザ等特別対策措置法に基づく緊急事態宣言の発令に伴い2021年度(令和3年)は、2月16日〜4月15日までに全国一律で期間が延長されています。

では、医療費控除を手続き可能な期間はいつからいつまでかご存知でしょうか?

実は、医療費控除は医療費を支払った年の翌年の1月から申告が可能です。

万が一、その年の申告期間が過ぎてしまっても、5年前までさかのぼって申告することが出来る「還付申告」を採用しているため、申告忘れが発生しても次回の確定申告で対応可能です。

詳しい手続きの詳細は、国税庁のホームページをご確認ください。

国税庁 確定申告特集 医療費控除を受ける方へ

医療費控除の準備:国税庁 「令和2年分 確定申告特集」より
医療費控除とは・・・申告する方やその方と生計を一にする配偶者その他の親族のために、令和2年中に支払った医療費がある場合は、次のとおり計算した金額を医療費控除として、所得金額から差し引くことができます。

国税庁HP

だれが申告をすればお得に?

患者さんご本人の医療費だけでなく、生計を共にしている配偶者や親族のために支払った医療費もあわせて申告することが可能です。

夫婦共働きで妻が扶養控除から外れている場合も、日常の生活の資を共にしていれば医療費を合算し、夫もしくは妻のどちらからでも申告することできます

所得税率が高い方が還付金額も高くなるため、収入の多い方が申告するように心がけると良いでしょう。

還付金の目安について

自分がいったいどれくらいの医療費控除額を受け取ることが出来るのか?

還付金の目安となる金額は、以下の計算式によって簡単に見積もることが出来ます

・1年間の医療費(その年に支払った医療費の合計)-保険金などの受給額ー10万円(所得が200万円以下の場合、所得の5%)=医療費控除額(上限200万円)
・医療費控除額×所得税率=還付金の目安

※所得税率 (2021年時点)

総所得金額に対する税率
195万円以下 : 5%
195万円を超え 330万円以下 : 10%
330万円を超え 695万円以下 : 20%
695万円を超え 900万円以下 : 23%
900万円を超え 1,800万円以下 : 33%
1,800万円を超え 4,000万円以下 : 40%
4,000万円超 : 45%

保険金などの受給額は、生命保険等の契約における入院費用などの補填分にあたるため、矯正治療の場合は、基本的に医療費から10万円を差し引いた額が、医療費控除の対象額となると考えて良いでしょう。

たとえば、所得500万円の患者さんが、矯正治療を受けてその費用に100万円かかった場合には、下記の計算により、18万円が還付される計算となります。

(100万円-10万円)×20%(所得税率)=18万円

なお還付金は、申告をしてから約1ヶ月後に指定口座に振り込まれます。

まとめ

最後に、今回ご紹介した「医療費控除の基礎知識」のなかでもこれだけは押さえておきたい5つの重要ポイントを箇条書きで以下にまとめておきます。

  • 医療費控除の対象となる症例であるかどうかチェックする
  • 医療費控除が適用可能な医療費は10万円から
  • 通院にかかる交通費も医療費に含まれる
  • ローン払い・クレジット払いも医療費控除の対象になる
  • 共働きの場合は収入の多い方が申告した方が還付金が多い

一般的に矯正治療費は高額になることがほとんどです。

医療費控除が対象となるケースでは確定申告を行うことで治療費の大幅な節約も可能なので、ぜひ忘れずにご活用下さいね。

この記事を書いた人

オルソペディア編集部

オルソペディア編集部です。矯正関する知識やコラム、お役立ち情報など様々な記事をお届けします。

カテゴリー: 特集

タグ: 矯正治療の豆知識 費用

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