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歯科矯正は高額療養費が使える?高額療養費と医療費控除の違いは?

更新日:2024/01/22

歯科矯正は高額療養費が使える?

歯科矯正治療において、高額療養費は基本的に対象になりません。

高額療養費制度とは、保険適用される診療に対し、1日から月末までにかかった1ヶ月間の医療費が自己負担上限額を超えた場合、その超えた分が後で払い戻しされる制度です。
そのため自費診療である歯科矯正には高額療養制度が適用されません。

怪我や病気で大きな手術をするなど、1ヶ月の医療費が高額になった場合に利用されることが多いです。

歯科矯正が高額療養費の対象になる場合がある?

歯科矯正治療の中でも、高額療養制度の対象になる場合があります。

歯科矯正だけでなく、外科手術を併用しないとかみ合わせを改善できない重度の「顎変形症」の場合は、術前矯正、外科手術、術後矯正、保定の管理まで、すべて保険適用となります。
ただし、すべての歯科医院が保険適用の治療に対応しているわけではなく、厚生労働省指定の顎口腔機能診断施設にて歯科矯正治療を受け、連携医療機関である指定の口腔外科病院で手術を行う必要があります。

顎変形症の治療は症例によって費用にかなり差がありますが、歯科矯正治療の費用が3割負担で平均40〜50万円前後、入院手術の場合は下顎のみの手術で平均40万円前後、上下顎の手術で平均70万円前後かかります。(入院時の食費負担や差額ベッド代等は含まれません。)
外科手術に関しては、同一病院で支払った1ヶ月の医療費が80,100円以上だと高額療養費の補助を受けられるため、総治療費が高額になったとしても費用の負担を抑えることができます。

高額療養費の毎月の上限額の違いは?

高額療養費の毎月の上限額は加入者の所得水準、年齢などによって異なります。

東京医科大学口腔外科学分野における顎矯正手術症例の論文をもとに、外科手術を併用する歯科矯正を行う患者層が70歳未満が多数であることから、70歳未満の自己負担限度額の計算方法を以下に記載します。
70歳以上から、自己負担限度額の計算方法が異なります。

被保険者の所得区分
(標準報酬月額)
自己負担限度額多数該当の
自己負担限度額
83万円以上252,600円+(総医療費−842,000円)×1%140,100円
53万〜79万円167,400円+(総医療費−558,000円)×1%930,000円
28万〜50万円80,100円+(総医療費−267,000円)×1%44,400円
26万以下57,600円44,400円
低所得者
(住民税非課税者等)
35,400円24,600円

資料:協会けんぽ「高額療養費簡易試算」をもとに作成
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/sbb30302/1935-66724/#04

多数該当とは、過去12ヶ月の間に3ヵ月以上高額療養費の支給を受けている場合、4ヵ月目から自己負担限度額が軽減される制度です。

高額療養費と医療費控除の違い

高額療養費と医療費控除の大きな違いは、高額療養費が“医療費の払い戻し”であるのに対し、医療費控除は“税金の控除”であるという点です。

医療費控除とは、所得税や住民税の算定において、本人やご家族の分も含めて1年間に支払った医療費が基準額を超えたとき、その超えた支払い分の医療費が所得控除され、税金の一部が還付される制度です。
高額療養費は加入先の医療保険者に申請をして医療費の払い戻しを受けるのに対し、医療費控除は税務署に確定申告することにより還付を受けることができます。
また、医療費控除は保険診療や自費診療関係なく医療費であれば利用できる制度で、この点も高額療養費と違う点です。

高額療養費の払い戻しの流れ

STEP.1

まず病院等の医療機関の窓口で自己負担3割の医療費を支払います。

STEP.2

支払った費用の領収書などの必要書類を、加入している公的医療保険の運営機関に提出します。

STEP.3

自己負担限度額の超過分について払い戻しを受けます。
ただし、申請書類の確認に時間がかかるため、医療機関の窓口で医療費を支払ってから、申請をし払い戻しを受けるまでに3か月以上かかる可能性があります。
運営機関によっては、病院等から送られるレセプトをもとに計算し、高額療養費の申請をしなくても自動的に払い戻されるケースもあります。

高額療養制度によって後で払い戻しを受けられるとはいえ、払い戻されるまでの間は自己負担限度額を超える分を自分で立て替えなければならないため、金銭的に負担に思われる方もいます。
その負担を軽減するために、事前に加入している公的医療保険に申請し、「限度額適用認定証」を発行してもらうことで、窓口での支払いを自己負担限度額までに留めることができます。
限度額適用認定証を医療機関の窓口で健康保険証と共に提示すると、窓口での支払いが自己負担限度額までで済みます。

しかし、限度額適用認定証の有効期限は“申請書を受付した月の1日“からであるため、受付した月より前の月の分には利用できません。
また、限度額適用認定証の有効期限は最長1年ですので、あらかじめ入院や手術などが分かっているからといって早い時期に申請しないように注意しましょう。

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